チリツイ・マルワラ国連大学学長と元国務大臣の猪口邦子議員と元外務副大臣の小田原潔議員がAIが齎す恩恵と脅威に関して議論した。(19/6/2024)

チリツィ・マルワラ 国連大学学長 兼 国連事務次長

私は国連大学の学長を務めているが、当大学はアジアにおいて唯一、国連研究機関として認められている存在である。そのため、我々が本日ここ日本に集結していることは極めて重要な意義を持つ。この重要性には多くの理由があるが、私の南アフリカ出身という視点から一点申し上げたい。それは、日本が主導して行っているにもかかわらず、あまり知られていないテクノロジーの民主化という貢献である。

一般的には、電子式卓上計算機はテキサス・インスツルメンツ・インコーポレーテッドによって量産されたと認識されている。しかし、実際に電卓を世界の僻地、隅々にまで幅広く普及させたのは日本のCASIOであった。我々が今後、国連グローバル・デジタル・コンパクトについて議論を進めていく際、日本が世界にもたらしたこのような貢献を決して忘れてはならない。

もちろん現在、国連は気候変動、急速な技術発展、平和と安全保障など多くの課題に直面している。しかし、我々が用いることのできる手段は非常に限られている。猪口議員が「行動心理学」に言及されたが、我々がなすべきことの一つは考え方を変えることである。グテーレス事務総長が提唱する「国連2.0」の一要素も行動科学である。これは梅村議員が指摘された点にも関連する。すなわち、これらの技術が心理学とどのように接点を持つか、例えば忍耐力との関係や、そうした知識をACUNSや大学などの機関にどのように取り入れ、これらの課題に対応していくかという点である。また、環境の問題もある。技術は諸刃の剣であり、リーダーシップに求められるのはこうした相反する課題のバランスを取ることである。AIは多くの利点をもたらすが、同時に炭素排出量の増大にも大きく寄与している。我々はどこでバランスを見出し、どのようにそれを実現すべきか。ジャパンタイムズの報道によれば、東京では記録的な高温が予想されている。昨年、最高気温の記録が更新されたが、今年はそれをさらに上回る見込みである。

我々が取り組んでいるもう一つの課題は「未来サミット」である。アジアにおいては、2020年の半ばの時点で、目標達成までに32年かかる計算となる。つまり、アジアがSDGsの目標を達成するのは2060年になってしまう。これは容認できない。未来サミットには5つの要素がある。第一に国連憲章の再確認、第二に多国間主義の再活性化、第三にSDGsを含む既存のコミットメントの実施促進、第四に新たな課題に対する解決策の合意、そして第五に信頼の回復である。

国連大学でも我々の役割を果たしている。一例を挙げれば、私はAIに関する諮問委員会のメンバーである。また、これらの問題の一部を扱う事務総長の科学諮問委員会にも所属している。グローバル・デジタル・コンパクトについては、中核的な推進役であるザンビアとスウェーデンを支援している。実際、数週間前にはアディスアベバを訪れ、グローバル・デジタル・コンパクトの概念を紹介し、デジタルリテラシー、デジタルインクルージョンの問題に取り組み、SDGs計画へのコミットメントを改めて示した。

来日以来、47都道府県すべてを訪問し、各地で講演を行うことを目標としている。過去16ヶ月の間に、13の都道府県を訪問した。

AIの将来的利用に関しては、善用と悪用の二つの可能性に直面している。これらを適切に識別し、AIを有益な目的のために活用する方策を見出す必要がある。そのために、以下の五つの重要な取り組みが必要であると考える。

第一に、AIのユーザーおよび開発者の行動変容が不可欠であり、AI教育の充実が求められる。第二に、インセンティブメカニズムの構築である。開発者が有害な目的ではなく、有益な目的のためにAIを開発するよう、適切なインセンティブを提供することが肝要である。第三に、適切な政策と規制の枠組みを整備し、AIの適正な管理を行わねばならない。第四に、標準規格の開発が必要である。例えば、医療分野でAIを使用する場合、いかなる基準が求められるかを熟考する必要がある。第五に、この技術を規制するための法整備が不可欠である。また、国内レベルのみならず、国際的な機関の設立も視野に入れるべきである。AIに関する高度な諮問委員会には、日本からも二名の委員が参加し、規制の在り方について議論を重ねることになるだろう。これらすべての取り組みは、優れたAIの開発と並行して進められねばならない。その中でも安全性の確保は、貴殿が指摘された極めて重要な点である。

私は国連大学の学長を務めているが、当大学はアジアにおいて唯一、国連研究機関として認められている存在である。そのため、我々が本日ここ日本に集結していることは極めて重要な意義を持つ。この重要性には多くの理由があるが、私の南アフリカ出身という視点から一点申し上げたい。それは、日本が主導して行っているにもかかわらず、あまり知られていないテクノロジーの民主化という貢献である。

一般的には、電子式卓上計算機はテキサス・インスツルメンツ・インコーポレーテッドによって量産されたと認識されている。しかし、実際に電卓を世界の僻地、隅々にまで幅広く普及させたのは日本のCASIOであった。我々が今後、国連グローバル・デジタル・コンパクトについて議論を進めていく際、日本が世界にもたらしたこのような貢献を決して忘れてはならない。

もちろん現在、国連は気候変動、急速な技術発展、平和と安全保障など多くの課題に直面している。しかし、我々が用いることのできる手段は非常に限られている。猪口議員が「行動心理学」に言及されたが、我々がなすべきことの一つは考え方を変えることである。グテーレス事務総長が提唱する「国連2.0」の一要素も行動科学である。これは梅村議員が指摘された点にも関連する。すなわち、これらの技術が心理学とどのように接点を持つか、例えば忍耐力との関係や、そうした知識をACUNSや大学などの機関にどのように取り入れ、これらの課題に対応していくかという点である。また、環境の問題もある。技術は諸刃の剣であり、リーダーシップに求められるのはこうした相反する課題のバランスを取ることである。AIは多くの利点をもたらすが、同時に炭素排出量の増大にも大きく寄与している。我々はどこでバランスを見出し、どのようにそれを実現すべきか。ジャパンタイムズの報道によれば、東京では記録的な高温が予想されている。昨年、最高気温の記録が更新されたが、今年はそれをさらに上回る見込みである。

我々が取り組んでいるもう一つの課題は「未来サミット」である。アジアにおいては、2020年の半ばの時点で、目標達成までに32年かかる計算となる。つまり、アジアがSDGsの目標を達成するのは2060年になってしまう。これは容認できない。未来サミットには5つの要素がある。第一に国連憲章の再確認、第二に多国間主義の再活性化、第三にSDGsを含む既存のコミットメントの実施促進、第四に新たな課題に対する解決策の合意、そして第五に信頼の回復である。

国連大学でも我々の役割を果たしている。一例を挙げれば、私はAIに関する諮問委員会のメンバーである。また、これらの問題の一部を扱う事務総長の科学諮問委員会にも所属している。グローバル・デジタル・コンパクトについては、中核的な推進役であるザンビアとスウェーデンを支援している。実際、数週間前にはアディスアベバを訪れ、グローバル・デジタル・コンパクトの概念を紹介し、デジタルリテラシー、デジタルインクルージョンの問題に取り組み、SDGs計画へのコミットメントを改めて示した。

自由民主党 小田原潔 衆議院議員 

マルワラ学長、貴殿が人類、AI、倫理の関係について静岡県にて講演されたことは承知している。そして、しばしば問われる疑問かと思われるが、我々は果たしてAIの利用を制御するに足る叡智を備えているのであろうか。国際社会には統制力を持つ警察が存在せず、宇宙開発の現状を鑑みれば、現実は「早い者勝ち」の様相を呈している。

AIの悪用の可能性は否定できないが、いわゆる「ホワイトナイトAI」によってそれを抑止し得るかもしれない。しかし、このホワイトナイトAIと悪意のあるAIとの闘争は永続的なものとなろう。さらには、いずれ悪意のあるAIが新たな難題を惹起する可能性も考えられる。例えば、自律的思考と優先順位付けを行うAI、人間の指示に従わないAIなどが挙げられよう。我々は、この予見し得る二つの課題にいかに対峙していくべきであろうか。

 

自由民主党 猪口邦子 参議院議員 

マルワラ学長、限られた時間の中で極めて重要なプレゼンテーションを賜り、感謝申し上げる。貴殿は科学技術の民主化について、日本は地方に技術を普及させることに多大な成功を収めていると述べられた。然るに、科学技術の分野における女性の活躍に向けて、さらなる前進は可能であろうか。多くの女性に高度な技術を普及し、生活や探求を支援することで、環境や貧困削減に新たな焦点が当てられ、女性のためのより良い教育が行われるようになると考える。故に、数年後には、女性の科学技術での活躍、そしてそれが和平などの交渉や取引を行う際に人々の行動科学や行動心理学にいかなる変化をもたらすかを観察したいと考える。

 

チリツィ・マルワラ 国連大学学長 兼 国連事務次長

猪口議員、貴殿の質問は極めて重要である。国連においても、シリコンバレーにおいても、大企業の女性CEOの数を俯瞰すると、本来あるべき姿には到達していない。国際連合はその課題と向き合う上で一定の役割を果たすであろうが、これは我々全員が尽力しなければならない事項である。

国連大学は懸命に取り組んでいる。キャパシティー・ビルディングへの協力を得るべく15校以上の大学を訪問した。先日も、長谷川教授とともに東京芸術大学を訪れた。日本の学生をインターンとして国連に招聘し、国連の組織の本質を理解してもらうためのプログラムも導入している。そして、日本国内のみならず、海外派遣も検討している。現在はヘルシンキの研究所に特別研究員を派遣する予定である。反面、いかにして国外から人材を招聘するかということも熟慮している。そのために我々はいくつかの大学と緊密に協力している。

沖縄に関して申し上げれば、実は沖縄は私が日本で最初に訪れた地である。那覇市長の主宰により、那覇市にて公開講演を行った。OIST(沖縄科学技術大学院大学)も訪問した。そして、我々は沖縄に施設を設立すべく動いている。実際、およそ2ヶ月後には決定に着手する予定である。これは我々にとっても喜ばしいことであり、平和と安全保障に関する施設を構想している。これは現代の極めて重要な課題であるからだ。

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