日本から源田孝自衛隊元空将補、上杉勇司早稲田大学教授、山田真弓立命館大学教授、桜井祐子弁護士(元外務省経済条約課課長補佐)が国連システム学術会議(ACUNS)東京連絡所長の長谷川祐弘氏と共に参加した。国連からは、オペレーション支援局の伊東孝一上席企画官が参加した。
一日目(2019年5月23日)イントロダクション
伊東孝一氏(国連)は、「PKOのための行動:Action for Peacekeeping (A4P)」についての包括的な発表を行い、PKO強化のためには、 国連加盟国、国連事務局、国際・地域機関、市民社会を含む全てのPKOステークホルダーが、各々の立場から行動を起こすことが重要であると述べた。
1.マンデートの一貫性、優先順位付け及び優越性の強化
Zhu Qiang氏(中国)は、簡明かつ実行可能なマンデートの必要性及び現場と本部との間で状況を正確に共有することの必要性を指摘した。必要に応じマンデートを更新すべきことについても言及した。
長谷川祐弘氏(日本)は、目標達成のためには各アクターの協働が不可欠であると強調し、また、そのためには各アクターの持つ情報が共有されることが必要であると述べた。さらに、困難な状況に置かれた今日の平和維持活動における専門性の重要性を指摘した。
Park Soon Hyang氏(韓国)もまた、簡明かつ具体的なマンデートの必要性を指摘するとともに、安保理・派遣国・国連職員という三者間の協議を通して、マンデートがミッションの現状に応じて適宜更新されていくことが必要であると述べた。
Bat-Erdene Batkhuu氏(モンゴル)は、文民保護に代表される保護マンデートが今日の平和維持活動の特徴であると指摘し、保護マンデートの遂行には、政治プロセスから排除されがちな因子を含む地域組織との協働を強化する必要があると述べた。また、戦略的かつ包括的なアプローチも重要であると述べた。
【議論】全てのプレゼンターがミッションの効率化に向けた各アクターの協働の重要性について言及した。
2.訓練と能力開発(訓練教材及び標準に達するための実践的要求を含む)のための協働に関する調整システム
源田孝氏(日本)は、2018年に行われたカーンクエスト演習を例に日本とモンゴルの訓練及び能力開発における協力の取り組みを紹介した。また、平和維持活動において要求される水準に達するための包括的な能力開発における、事前教育、指導教官のスキル及び指揮所訓練の重要性並びに国を越えて経験と技術を共有することの効果について述べた。
Kim Pan Young氏(韓国)は、要求水準を充足する訓練を持続的に提供することの難しさについて述べた。それは平和維持活動においては通常の訓練では得ることが難しい特殊なスキルが必要であることや、要求が状況に応じて変化することに起因するとし、そのために、テクノロジーベースの訓練や、効果的で持続性のある訓練・能力開発のための地域的な連携を提案した。
Nyamjargal Nergui氏(モンゴル)は、実践において要求水準を充足することの必要性を強調し、国によって軍のスキルが異なることから、必要な訓練は国毎に異なると述べた。能力及びスキルのギャップは特定されるべきであり、また、リソースを効果的に利用するためには高い機動性と能力が必須であることを念頭に、現在の訓練が適切に評価付けられるべきであると述べた。
Liu Chao氏(中国)は、派遣前の訓練について各国が責任を持つことを強調しつつ、国を越えて経験やベストプラクティスを共有することにより、訓練の重複を削減できると述べた。
【議論】参加者らは、訓練における協働というコンセプトに同意しつつも、軍事情報が国家機密であることに鑑みて協働がどこまで現実的であるかという点にまで議論が及んだ。
3.力の増強、装備の有用性及び持続性(共同派遣を含む)のための新たなアプローチ
Kim Pan Young氏(韓国)は、今日の平和維持活動における未知かつ予測不能な脅威に対し、可能な限り死傷者を出さずに対処するための要素として、装備、テクノロジー、情報収集活動、医療及び基地の五つを挙げた。
Enkhbold Rentsen氏(モンゴル)は、今日の平和維持活動における困難として、迅速な派遣、受入れ国の調整及び新たなテクノロジーの評価という三つの要素を挙げた。それら各要素について、力を最大化するために協働は不可欠である。また、中国との共同派遣において、内陸国であるモンゴルが、装備面において薄弱である海上運輸の場面で協働の利益を受けた例が紹介された。
Zhu Qiang氏(中国)は、力の増強のためには様々な側面における包括的な改善が必要であると述べた。特に、メンター面のスキルを含むリーダーシップが今後より重要となると述べ、ここでもまた協働の重要性を繰り返した。
伊東孝一氏(国連)は、三角パートナーシップ(Triangular Partnership)について説明した。これは主にアフリカの国連要員派遣国の施設部隊の能力を構築することを目的として2015年に開始された「革新的な」国連のPKO訓練事業。同事業は、現在では 地域的にも分野的にも拡大し、アジアにおける施設訓練、アフリカにおける通信や医療訓練も行っている。協力加盟国からの訓練支援を受け、多くの国連要員派遣国のPKO要員が、訓練を受けた後、 PKOミッションに 必要な装備品を持って展開している。
【議論】プレゼンターらから提起された具体的な提案や事例に基づき、意義のある議論がなされた。
4. 統合された実践における政策的枠組みの構築
Nyamjargal Nergui氏(モンゴル)は、近年の平和維持活動は文民保護に代表される保護マンデートを有し、軍、警察及び文民で構成されており、その観点からも統合はキーワードであると述べた。また、各アクターが、自身及び他のアクターがマンデートという一つの目的を共有していることを認識しつつ、それぞれの業務と協働の仕組みを理解しすることが必要であると述べた。ここでも、現状の訓練活動・システムのギャップの特定と評価が重要であると指摘された。
Liu Chao氏(中国)は、軍派遣国の能力構築が最優先課題であると強調し、そのためにはアフリカ連合等の地域組織の支援や、軍派遣国の能力を確認するための派遣前訪問が有用であると述べた。加えて、バランスのとれた統合的な政策的枠組みを構築するためには、透明性が重要であると述べた。
上杉勇司氏(日本)は、受入れ国の地域住民への注目の欠如や、人事制度に起因する指導者の専門性の集積の不足等、今日の平和維持活動を取り巻く総合的な問題について指摘した。
Park Soon Hyang氏(韓国)は、強力なリーダーシップによる多層的な側面における協力やデータに裏付けられた強化等、平和維持活動におけるパフォーマンスを向上させるための方策を示唆した。
【議論】それぞれのアクターは独自の利害、立場、役割を有しているという事実を背景に、各アクターの声と主体的な取り組みが重要であるという指摘がなされた。
5. キャビアートに関する包括的かつ透明性の高い手順の構築
Wang Ying氏(中国)はキャビアートを生じさせる主な原因(要求が多く複合的なマンデート、限られた予算及びリソース並びにミッションにおいて発生する脅威)を分析し、キャビアートを減らすための提言(マンデートの改善、能力開発における協力等)を行った。
山田真弓氏(日本)は、マンデートが変更された際にキャビアートの意義や範囲が不明確になると指摘し、それがアクターの混乱や機能不全につながりかねないと述べた。キャビアートは、変化する状況の下でオペレーションの柔軟性を害しないよう、国連全体で広く共有され、かつ正確に理解される必要があると述べた。
Park Soon Hyang氏(韓国)は、各アクターがキャビアートについての明確な方針や手順を共有できるよう、キャビアートが国連において正確に定義される必要があると述べた。また、キャビアートは派遣時点において明確かつ詳細に提示されるべきであると述べた。
Buyanbat Turkhmunkh氏(モンゴル)は、司令官が決定を下す際にキャビアートが顕在化すると述べた。アクターがキャビアートの下でも柔軟に動く余地を確保するためには、不測の事態に備えた周到な計画及び高度なミッションマネジメントが重要であると述べた。
【議論】参加者らは、キャビアートがミッション遂行の障害であると認識しつつも、キャビアートの存在を前提として、現実的な議論を行った。
At the end of the concluding discussion, the participants held a group photo session.
Thursday, May 23
8:45 h Welcome, Opening and Introduction of Participants
Mr. Badambazar Jambaa, Major General, Deputy Chief of the General Staff of the Mongolian Armed Forces
Facilitation: Mr. Niels Hegewisch, Resident Representative, FES Mongolia
9:15 h Introduction on the most recent developments on the Action for Peacekeeping
Mr. Takakazu Ito, Senior Programme Officer, Department of Operational Support, United Nations
9:30 h Session 1: Strengthening coherence, sequencing and prioritization of mandates
Facilitation: Mr. Bat-Erdene Batkhuu, Colonel, Chief of Peace Support Operations’ & Military Cooperation Department (PSOMCD), General Staff, Mongolian Armed Forces
Suggestions by (15 minutes each):
•China: Mr. Zhu Qiang
•Japan: Mr. Sukehiro Hasegawa
•Korea: Ms. Park Soon Hyang
•Mongolia: Mr. Bat-Erdene Batkhuu
10:30 h Facilitated discussion
11:00 h Tea and coffee break
11:15 h Session 2: Coordination mechanism related to training and capacity building including training materials and standards matching operational requirements
Facilitation: Ms. Wang Ying, Deputy Director of United Nations Association of China
Suggestions by (10 minutes each):
•Japan: Mr. Takashi Genda
•Korea: Mr. Kim Pan Young
•Mongolia: N.N.
•China: Mr. Liu Chao
11:55 h Facilitated discussion
12:30 h Lunch break
Restaurant: Le Bistrot Francais, Ikh Surguuli Str. (in walking distance)
13:30 h Session 3: New approaches to improve force generation, equipment serviceability and sustainability including co-deployments
Facilitation: Mr. Sukehiro Hasegawa, President of the Global Peacebuilding Association of Japan
Suggestions by (15 minutes each):
•Korea: Mr. Kim Pan Young
•Mongolia: N.N.
•China: Mr. Zhu Qiang
•UN: Mr. Takakazu Ito
14:30 h Facilitated discussion
15:00 h Session 4: Developing an integrated performance policy framework
Facilitation: Mr. Park Heung Soon, Professor of Sunmoon University
Suggestions by (10 minutes each):
•Mongolia: N.N.
•China: Mr. Liu Chao
•Japan: Mr. Yuji Uesugi
•Korea: Ms. Park Soon Hyang
15:40 h Tea and coffee break
16:00 h Facilitated discussion
16:30 h Session 5: Developing a clear, comprehensive and transparent procedure on caveats
Facilitation: Mr. Alexander Kallweit, Resident Representative, FES Beijing
Suggestions by (10 minutes each):
•China: Ms. Wang Ying
•Japan: Ms. Mayumi Yamada
•Korea: Ms. Park Soon Hyang
•Mongolia: N.N.
17:10 h Facilitated discussion
17:40 h Summary of the first day
18:00 h Closing
followed by Dinner
Restaurant: Mongolian’s, Shangri-La Mall, 3rd floor (in walking distance)
End of day
Friday, May 24
9:00 h Session 6: Facilitated discussion on common suggestions for
•Strengthening coherence, sequencing and prioritization of mandates including a comprehensive
•Coordination mechanism related to training and capacity building including training materials and standards matching operational requirements
•New approaches to improve force generation, equipment serviceability and sustainability including co-deployments
•Developing an integrated performance policy framework
•Developing a clear, comprehensive and transparent procedure on caveats
(35 minutes for each topic, 15 min coffee break)
Facilitation: Mr. Sven Schwersensky, Resident Representative, FES Korea
12:30 h Conclusion and way forward
13:00 h Lunch at the hotel
14:00 h Departure to the Joint Training Center of the Mongolian Army in Tavan Tolgoi (dress code: casual)
15:30 h Arrival in Tavan Tolgoi and tour of the Joint Training Center of the Mongolian Army
17.00 h Departure to Ulaanbaatar
19.00 h Dinner
Restaurant: TBA
End of day
China
Mr. Liu Chao, Senior Advisor of the China Institute for International Strategic Studies
Ms. Wang Ying, Deputy Director of United Nations Association of China
Mr. You Baishun (Coordinator), Program Officer of United Nations Association of China
Mr. Zhu Qiang, Deputy Secretary-General with OBOR-100-Experts’ Forum, former Trainer of the UN Peacekeeping Police Training Center of China
Japan
Mr. Takashi Genda, Retired Major General of Japan Air Self Defense Force, Regional Director of Reven Group International Japan
Mr. Sukehiro Hasegawa (Coordinator), President of the Global Peacebuilding Association of Japan, Director of the Academic Council on the UN System (ACUNS) Tokyo Liaison Office, and the Executive Director for Academic Exchange of the United Nations Association of Japan
Ms. Yuko Sakurai, Former Deputy Director of the Economic Treaty Division of the Ministry of Foreign Affairs of Japan
Mr. Yuji Uesugi, Professor, Faculty of International Research and Education, Waseda University
Ms. Mayumi Yamada, Assistant Professor of College of International Relations, Ritsumeikan University
Korea
Mr. Kim Pan Young, Lieutenant Colonel of the Korean Army
Mr. Park Heung Soon (Coordinator), Professor of Sunmoon University, Former President of the KACUNS
Ms. Park Soon Hyang, Professor of the PKO Center, Korea National Defense University
Mongolia
Mr. Badambazar Jambaa, Major General, Deputy Chief of the General Staff of the Mongolian Armed Forces
Mr. Bat-Erdene Batkhuu (Coordinator), Colonel, Chief of Peace Support Operations’ & Military Cooperation Department (PSOMCD), General Staff, Mongolian Armed Forces
Mr. Batzaya Odsuren, Lieutenant Colonel, Senior SO, PSOMCD, General Staff, Mongolian Armed Forces
Ms. Nyamjargal Nergui, Colonel, Senior SO, PSOMCD, General Staff, Mongolian Armed Forces
United Nations
Mr. Takakazu Ito, Senior Programme Officer, Department of Operational Support, United Nations
Germany
Mr. Michael Fernau, German Deputy Ambassador to Mongolia
Secretariat
Ms. Choi Yunmi, Professor, Korea National Defense University
Friedrich-Ebert-Stiftung
Mr. Niels Hegewisch, Resident Representative, FES Mongolia
Mr. Alexander Kallweit, Resident Representative, FES Beijing
Mr. Sven Schwersensky, Resident Representative, FES Korea
Ms. Sung Dain, Project Manager, FES Korea
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